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2006年7月15日 (土)

音楽の消費者

私たちは「音楽の消費者」である。

一寸古いが、音楽社会学者アドルノによれば、人々の音楽への接し方には6つのパターンがあると言う。①音楽の構造を聴き取る能力を持った「エキスパート」、②全体のまとまりを自発的に理解する「よき理解者」、③レコード(CD)を次々に購入して聴く「教養消費者」、④音楽を聴いて開放されることを望む「情緒的聴取者」、⑤陳腐なコンサートに飽きて古楽に聴き入る「復讐型聴取者」、⑥ジャズ(日本では演歌?)だけを聴く「ジャズフアン」。
  さらに彼は、①以外は全て「娯楽型聴取者」であり、資本の管理の下にモーツアルトからジャズまで商品化された音楽を消費しているのだと、実に1933年の論文で述べている。

言い得て妙だと思いませんか?

最近は、1曲100~300円程で、ネットで購入することが出来、ますます「音楽は商品」という感覚に拍車が掛かって来た。若者に負けてはなるまじ、と、私も、携帯電話に、メモリーを付加し、ネットから数曲購入して入れてみました。もっとも、購入サイトにもよるのでしょうが、好みに合う曲は少ないという印象です。若い人が主たるターゲットになっているからでしょうか。

同じ「娯楽型聴取者」であるにしても、私の場合は④③の状態から、せめて②の方へ上がりたいと言う願望はある。

先日、菊地成孔の「東京大学のアルバート・アイラー」と言う本を入手した。

この本は、東京大学での、ジャズの歴史と理論についての講義録だが、講師の個性を反映して、とてもユニークな内容になっています。

この本については、別途詳細に触れたいと思いますが、菊地氏が言うには、この講義の正式のタイトルは、「12音平均律→バークリー・メソッド→MIDIを経由する近・現代商業音楽史」だそうです。
これは何かと言うと、音楽を記号化、デジタル化して記録する手法の歴史的な大きなエポックが3回生じたと言うことを示しているのだそうです。

12音平均律は、1オクターブを数学的に単純に12等分した素音をベースに音楽を作るもので、18世紀半ばから西洋音楽において一般化し始め、バッハの彼の有名な「平均律クラヴィーア曲集」により、ワールド・スタンダードとなったものです。これにより、西洋音楽は大衆に受け入れやすく、ポップなものになった。

バークリー・メソッドは、20世紀半ばに、ボストンのバークリー音楽院で商業音楽を製作するためのメソッドとして教え始めたもので、音楽の和声や旋律のバリエーションを記号化・数値化して手っ取り早く教える発想の元にできたものです。たまたま、同時期に発生してきたバップ→モダンジャズとの相性が抜群で、これらの発展に寄与したのです。現在でも、演奏の現場で使用されているコード・シンボルがそれです。モダンジャズでは、指定されたコードの範囲内で、演奏者は自由な発想が許され、そこに、モダンジャズの真髄があった。
バークリー・メソッドはジャズだけでなく、ポピュラー音楽の世界にも広く受け入れられ、その興隆に繋がったことも特筆すべきことです。


MIDI(Musical Instrument Digital Interface)は、1982年に制定された規格のことです。これは音楽の全ての要素を記号化・デジタル化しようとするもので、最初はシンセサイザーのためにヤマハが開発しました。例えば音色や発音状況までもが数学に置き換えられるので、純粋に電子機器のみで音楽をアウトプットできるようになった。
MIDIは厳密に音楽を記号化できるから、バークリー・メソッドのコードのようにアバウトなところがない。もう一度5線譜に戻った感じである。モダン・ジャズの即興性はこのアバウトさに支えられていたし、即興演奏のテクニックも行き着くところまで行ってしまったから、MIDIの出現に合わせるようにジャズにおける「モダニズム」は終焉した、と菊地氏は述べる。

少々堅い話になってしまったようです。言い訳ですが、私は理系人間だから、音楽の数値化のような話題には、自然に関心を持ってしまうのです。

口直しに美しい花の写真を。
これは日光にお住まいのKさんが撮影されたものを許可を頂いて掲示しました。自然に恵まれた土地ならではの珍しい花。そして撮影技術もとても素晴らしいと思います。

C
ニッコウキスゲ
(日光Kさん提供)


Photo_49
エリモシャクナゲ
(日光Kさん提供)



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