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2006年8月11日 (金)

マイルス・デイビス…モード・ジャズって?

マイルス・デイビスの最も有名なレコードと言えば、「カインド・オブ・ブルー(1,959)」でしょう。モダン・ジャズのレコードとしては驚異的に売れていて、200万枚に達しているらしい。

ジャズ史の上でもモード・ジャズの世界を切り開いた画期的なものとの位置づけになっています。それまでのモダン・ジャズはバップをベースとしたコード進行に基づく音楽だった…。

こういうことは表面的には知っていたが、音楽はただ聴くだけの人である私は、「モード」とか「コード進行」とかという言葉の意味については、全く理解できず、永年、謎のままの状態でありました。

このレコードを買った200万人もの人たちはどうなんだろうか?

715日付けのブログで紹介した「東京大学のアルバート・アイラー」はジャズの歴史と理論についてのとても分かりやすいよい本だ。この問題についても当然、触れていて、私を少しばかり分かったような気分にしてくれた.。以下は、その受け売りというか、私の理解を書いてみたものです。

コードについては、和声の種類を記号化したものだ、ぐらいのことは分かっていたが、ジャズの譜面では、あるコードが指定されている場合、その和声(通常4音)のどの音が上でも下でも構わない…演奏者に委ねられる、ということのようです。

さらにコード進行というのは、単にコードが時間的に変化して行くということだけでなく、意味を持った(作曲者の意図を持って)進み方をするということなのです。

具体的には、7種類ある和声(コード)には、それぞれ特徴的な響きがあって、大きくはT(トニック;安定)、SD(サブドミナント;宙吊り/緩い緊張)、D(ドミナント;緊張)と言う機能に分かれ、これを組合わせて、山あり谷ありのストーリーを作って行くと、強力な進行感が得られるのだという。

こういったコードとその進み方だけを指定する仕組みによって、アドリブやプレーヤー間の交歓が可能になるのです。

(そう言えば、中学か高校の音楽で、先生が適当に和声を弾き、生徒がT,D,SDの区別を聞き分けるということをやったなあ。)

これに対して、モードとは何か?

ファッションのモードと同じような意味合いです。コードの進行で曲を作っていくのではなく、全く異なる作り方をします。すなわち、曲全体を一つのモード=音列で支配されるように作ります。その音列とは、例えば「ど、れ、み、ふぁ、そ、ら、し、ど」であり、第3音と第6音が半音下がった「ど、れ、bみ、ふぁ、そ、ら、bし、ど」は、また別のモードなのです。モードが違うと、音感的にかなり違う印象を受ける。なお、モードは「れ」から「れ」、「み」から「み」・・・という風に種類があるようです。

コーダルな曲では異なるコード間を行き来するが、モーダルな曲は一つのモードで終始する。(実際には1曲の途中でモードが変わることもしばしば)

演奏者は指定されたモードの中でアドリブすることになる。T、SD、Sのようなものに縛られることも無い。和声的にはシンプルになるから、アドリブの領域も大きく取れるようになると言うことらしい。

菊地の別の本によると、数学で言えば、コーダルな曲は微分的であり、モーダルな曲は積分的であるという面白い表現をしていた。コーダルでは、最小の長さと形が決まっていて、その枠内でアドリブのスペースをはめ込んでいくが、モーダルな曲では、次々とアドリブを積み上げていくことが出来るのだという。(この辺りは立ち読みの記憶で書いたので多分正確ではないでしょう)

いずれにしても、モダン・ジャズは個人のアドリブに芸術的価値を認めた音楽であり、それを可能にしたのが、コード、モードなのです。

モード・ジャズは音楽としてはクールに聞こえるのが特徴である。また、クラシックの作り方に似ていて、マイルスもクラシックを意識していたという証言がある。また、シンプルな故に、単調になる嫌いもあって、リズムを複雑にして色付けをする方向、ポリ・リズムの方向に進んで行った(ハービー・ハンコック他。マイルス自身もリズムに関心を強く持つようになり10年後には「ビッチェズ・ブリュー」で結実した。…なるほどそういうことだったのか。)

なお、現代の曲作りでも、コーダル、モーダル共に取り入れられているようです。

Photo_59 上はチャリー・パーカーの「コンファメーション」の譜面
コード・シンボルがたくさん並んでいる。
下はカインド・オブ・ブルーの中の「ソー・ホワット」の譜面。コード・シンボルが少ししか出てこないし、同じシンボルのように見えるが、意味合いは異なり、モードの指示である

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