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2006年8月22日 (火)

眼の進化について・・・三葉虫は何を見たか?

前回の記事で、眼の進化についてとり上げたが、その続きを少しばかりやりましょう。

マイクル・ランドという人は、眼の結像方法には9通りの基本原理が存在し、生物界ではそのほとんどが何回でも試されていると言う。例えば、大型望遠鏡ではレンズの代わりに凹面鏡を使うが、この原理に基づく眼が、様々な軟体類や甲殻類によって発明されてきたとのことである。昆虫が持つ複眼もまた、別の基本原理による。

最近出た本で、「眼の誕生(アンドリュー・パーカー2003、翻訳2006)」と言う本がある。サブタイトルは「カンブリア紀大進化の謎を解く」となっています。
広く知られている事実ですが、今から5億4300万年前、カンブリア紀の初めに、生物が爆発的に進化した。それ以前はクラゲやカイメン程度の生物しかいなかったが、突如として、僅か500万年ほどで、生物は実に多様な形態を持つに至った。
カナディアン・ロッキーで発見された5億年前のバージェス頁岩には、多種多様な奇妙奇天烈な生物の化石が含まれていたことで有名になった。何がきっかけかは分からないが、生物が一斉に進化の試行錯誤を始めた様子がここには記録されているのです。
このきっかけを巡って諸説が出ているけれど、パーカーは、54300万年前に「眼」が誕生したのが原因だと言う新説を出したのです。彼はこれを「光スイッチ説」と呼ぶ。
生物にとって、光はとても強い刺激で、進化を促す要素であったはずだと言う。これを利用するようになるのは半ば必然であったわけで、ある生物が眼を獲得した時、光スイッチが入った、とパーカーは表現する。
眼を獲得した捕食者は圧倒的に有利で、生物界に大混乱をもたらし、生き残りのために一斉に進化を始めたというのが、この説の骨子です。この、最初の眼を備えた強力な捕食生物とは、原始三葉虫だろうと彼は言う。

三葉虫に関しては、素晴らしい本がある。「三葉虫の謎(リチャード・フォーティ2000、翻訳2002)」がそれである。三葉虫の最新の研究成果が惜しげもなく述べられていて、図版もたくさん付いている。一口に三葉虫といっても、こんなに多様な形態を持っていたのか、体の構造や生態がそこまで分かっていたのか、と、私は驚嘆した次第です。
この本でも、三葉虫の眼について詳しく論じています。
小さな三葉虫の化石を昔持っていたこともあるが、眼の存在など気にも留めなかったが、この本の写真でははっきり見ることが出来ます。三葉虫類の最も古いもののひとつ、モロッコ産のファロタスピス(54000万年前)にも、既に大きな眼がついています。フォーティも、カンブリア紀が始まったほとんどすぐの時に動物間で多様な眼への進化が起こっている、と言っています。

ところで、三葉虫の眼はとても変わっていて、カルサイト(方解石)で出来ているのだという。他の動物は皆、柔らかいレンズを選んだのに対して、である。通常我々が手にすることが出来るカルサイトは白色だけれど、ゆっくり成長させて完璧な結晶にすれば透明になる。三葉虫の体は堅固な鎧の殻で出来ており、その殻と一続きの眼鏡のようにこの眼が据えられている。カルサイトの結晶は6面体になる性質があり、光は結晶軸に沿った方向にだけ通過させる。この結果、三葉虫の眼は6面体が多数集まった蜂の巣状になり、トンボなどの眼と同じ複眼を構成するのです。レンズが鉱物で出来ているがゆえに化石を見れば、この複眼のレンズの数まで数えることができるのだ。実際に数えてみると1個から数千個までの幅があるようだ。
この眼で何処を見ていたか?三葉虫の眼の視野の研究までなされている。レンズの要素である方解石の軸の方向を綿密に測定した結果、大多数は、全面を見るのでなく、前方と側面それに僅かだが後方を見ていたことが分かった。上部は全く見ていなかったようだ。多分海底に棲んでいたためだろう。
一方、全面を見るための巨大な眼を持った三葉虫も多く見つかっている。遊泳型の三葉虫である。著者は、このタイプについて、水槽で流線型をテストする実験まで行なっている。その結果、高速の遊泳が可能だったと言っている。

最初に眼を持った三葉虫は、眼も持たず、何の保護もない軟体動物を食べ放題だったろう。しかしそんなパラダイスは暫らくで終わりを告げた。強烈な淘汰圧により、急速に軟体動物が固い殻を防護用に持つようになった。一方、三葉虫のほうも強烈な顎を持つようになり、また、自身が捕食されるのを防ぐために、鎧と棘を身に纏うようになった…

興味尽きない話しがたくさんあるが、とりあえず、これくらいにしておこう。

Photo_64 Richard Fortey 著「三葉虫の謎」
実に多くのバリエーションを写真で見ることが出来る。
三葉虫は3億年にわたって存続した偉大な成功者である。
化石も多く得られ、構造や生態の詳細が次々と明かされつつある。
著者の三葉虫への並々ならぬ愛着心が伝わってくる。

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