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2006年12月26日 (火)

インド旅行の印象その14(ファテープル・シクリ)

ファテープル・シクリ・・・
インドの言葉になれていないせいもあるが、とても不思議な響きのする言葉である。「勝利の市」を意味すると言う。アグラの南西40kmに位置する。
ムガル帝国を揺るぎ無きものにしたアクバルは、都をアグラから別のところに移すことを決意する。それは、永らく恵まれなかった世継ぎが、ある聖者の予言によって、1571年にようやく生まれたことによる。シャイフ・サリーム・チシュティーという聖者だが、名誉と感謝を捧げるために、彼が居を構えていた、アグラから少しばかり離れた、湖を見下ろす岩盤台地上の眺めの良い場所を選んで、新都を建設したのである。
建設には15年以上かかった。そして居住開始してから僅か14年で放棄されてしまった。一般的な説明としては、水の確保が困難であったことが理由とされる。
しかし、1585年のシクリからラホールへの遷都は、不安があった辺境地域に備えるためで、水が原因とばかりは言えないという説もある。なお、アクバルは1598年に首都をラホールからアグラに戻しているが、なぜシクリに戻らなかったかも謎である。

ファテープル・シクリの代表的な建物はパンチ・マハルとディーワーニ・ハースであろう。
聳え立つような近づきがたい無装飾の赤色砂岩の外壁が一連の居住用の宮殿建築を取り囲んでおり、それらは全て中庭に向かって開かれている。西インドのクジャラートによく見られる形式だという。あたかも木造のように見えるのもここの建物群の特徴である。用途は基本的にはハーレムだという。

とりわけ目立つ五層のパンチ・マハルは涼風を求める楼閣で、ここで宮廷の女性たちが、繊細な格子模様のあるスクリーンでプライバシーを守りつつ、寛いだとされる。スクリーンはほとんどが失われているが、断片があるので確かである。最下層の柱は84本、最上階は4本。上にドームが乗る。柱は全てデザインが異なる。

さらに風変わりなのは、ディーワーニ・ハース。皇帝の公的な謁見の広間と呼ばれている。実際の用途はさらに研究の余地ありということのようだ。2階建てで、頂部の四隅に背の高いチャドリー(傘型屋根をつけた小亭)を乗せているのも変わっているが、さらに驚くのは内部の構造である。中央に普通ではとても考え付かない風変わりで豪華な柱頭を持った柱がある。この柱は円形玉座を支えているのである。そして円形玉座からは橋がかけられ内部の階上席へと繋がっている。アクバルはこの中央の玉座の上に敷かれた絹のクッションに座して、階下に立つ市民の訴えを聞いたというのが、これまでの説だそうだ。研究者の中には貴石や宝石を検閲したと考えるものも居るようだ。
いずれにしても、この空中に浮遊するような玉座によって、アクバルの地位は宇宙的存在、ムガル帝国の絶対的中心であることを宣言しているという。

アグラで、タージ・マハルとアグラ城という大物をを見た後だったので、ファテープル・シクリの観光に入った時は、集中力がかなり途切れていたと思う。第1印象が「何か妙な・・・」であった事もある。そのせいで写真の枚数が少ないのである。今から思えばタージやアグラ城以上に面白い観光スポットだったのに。とても残念だ。
特に、写真を撮らなかったもので大事だったのは、ブランド・ダルワーザと呼ばれる赤色砂岩の巨大な門である。高さ54mで形もユニーク。アーチ型の開口部周辺はコーランの詩句によるカリグラフィの幅広の連続模様で縁取られている。
もうひとつ撮れていないものがある。預言者シャイフ・サリーム・チシュティーの廟である。
原因は分かった。時間があまりないせいもあり、最初に全体説明があり、即、自由時間になってしまったからだ。この地の専門のガイドが付いて、それぞれの対象物の前で説明を聞いていれば写真を撮らないはずが無いのである。

しかし、ファテープル・シクリの最後に思い掛けぬ余興が待っていた。当初から問題とされた水の確保のために大きな貯水槽があるのだが、これを見ながらガイドの説明を聞いていると、貯水槽の向こう側に点のように見えた人物が、突然大きな声をあげ、両手を広げて水面から10m近くある水槽の縁に立った。裸のようだ。そしてあっという間に飛び込み・・・浮き上がり・・・岸に泳ぎ着き・・・我々のところまで走って来た。その間ものの数十秒。見事といわざるを得ない。かなりの収入を得たようだ。インドにはパフォーマンスをやって金を稼ぐ人々が多いが、こんなのもありか。世界遺産の中でやれてしまうのもインドならでは?

0067ファテープル・シクリの入り口。
逆光で見難いが、高い塔が、ブランド・ダルワーザのようである。斜め後ろから見た形になる。


Photo_123ブランド・ダルワーザ。54m の高さがあるというのだが、何処から測るのか?写真が無いので、「インド美術」から引用。







100600605層のパンチ・マハル。ここはハーレムである。




00652層のディーワーニ・ハース。
皇帝の公的な謁見の広間



0061ディーワーニ・ハースの内部中央にある皇帝の玉座とそれを支える柱。
普通では考え付かないデザインである。この上にアクバルが座り、下に居る市民から訴えを聞いて裁いた。主要な貴族たちは王の玉座と橋で繋がった壁際の階上席に座った。





Photo_124預言者シャイフ・サリーム・チシュティーの廟。
これは見た覚えが無いのです。「インド美術」から引用。



F1012
用途不明



0063 貯水槽の中へ、いざ!

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