« 見えてきた暗黒宇宙...ACC講座より | トップページ | 「見立て三酸図」...美人画ですよ »

2007年2月15日 (木)

ハシリドコロ...シーボルト事件

東山植物園長による「人と植物、その深いかかわり―絵画表現を中心に」という、とてもユニークな講演を聴いた。
浮世絵を中心にした日本絵画に見られる草木花の表現から何が読み取れるかを、講師の鋭い洞察力と博学によって解説して頂くものである。
数多くの事例について紹介頂いたが、その中で特に印象に残った2点について、書いてみよう。今回のブログはその1.

ハシリドコロという奇妙な名前の植物がある。これがシーボルト事件(1828年)と関係があるのである。
次の絵は、シーボルトと交流があった、水谷豊文(1779~1833)という尾張藩士で博学家が描いた「ハシリドコロ図」である。
百科事典によると、ヒヨス、ベラドンナと並ぶ著名なナス科の有毒植物。根茎はロート根という生薬となる(ロート製薬の名の由来でもある)。有毒成分は複数のアルカロイド。
Photo_153




土生玄碩(はぶげんせき)という安芸国の眼科医は杉田玄白塾を出入りしているうちに名が知られるようになり、幕医として抜擢された。玄碩は、江戸長崎屋に逗留中のシーボルトを訪ね瞳孔を散大させる薬を所望したところ、最初は快く分与してくれたが、次回は断られた。窮余の策として葵の紋服と交換で所望したところ、日本にもあることを教えてくれた。それがハシリドコロであった。シーベルトが持参していたのは西洋で古来から知られていたベラドンナであった。しかし、勘違いしたハシリドコロにも同じ効能があったのである。
この経緯の中で水谷豊文の絵が直接登場したのかどうかは説明がなかったが、多分そうだろう。1828年、シーボルト事件すなわち洋学者弾圧事件が起こる。日本地図を提供した高橋景保は死罪。葵の紋服を渡した土生玄碩は改易の処分および家財没収。シーボルトは国外追放となった。

土生玄碩は罪を犯したが、日本の医学界にハシリドコロの効能を知らしめ、大きな貢献をしたとも言える。
Photo_154
こちらはベラドンナ。同じナス科だからよく似ている。
ベラドンナは古くから「悪魔の草」として、その強い毒性が怖れられていた。悪魔や魔女はことのほかこの毒草を愛で、これを使って人を殺め、体に塗って空を飛んだと、言い伝えられている。
ベラドンナはイタリア語の「美しい淑女」の意。ベネチアの女性たちは汁を点眼し眼を美しく見せるのに使用したからだ。ボルジア家の時代に毒殺に何度も使用されたことでも有名。(平凡社百科事典より)

|

« 見えてきた暗黒宇宙...ACC講座より | トップページ | 「見立て三酸図」...美人画ですよ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/172334/13911058

この記事へのトラックバック一覧です: ハシリドコロ...シーボルト事件:

« 見えてきた暗黒宇宙...ACC講座より | トップページ | 「見立て三酸図」...美人画ですよ »