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2007年4月12日 (木)

絵画におけるアレゴリー...例えばボッティチェリの「誹謗」

ACCも新年度入りし、カリキュラムも新しくなった。今期は旅行の計画が多いので受講講座は最小限にしておくつもりだ。
6日に、木俣先生の「ヨーロッパ絵画の図像学」の第1回があった。先ず取り上げられたのは『寓意と歴史』でした。

『歴史』の方は、特に説明は必要無い。古くから歴史上の出来事が絵画の題材とされて来た。いろいろ紹介があったが、例えば、ラファエロの「アテネの学堂」は、古代ギリシャの哲学者や思想家たち56人が、それぞれの個性を想像して描かれている。人物配置の構図はダ・ヴィンチの「最後の晩餐」に学んだものとなっているとのこと。
中央の二人は左がプラトン、右がアリストテレス(哲学)。この二人が目立つような仕掛けがなされている。すなわち奥行のある空間が学問の奥深さを表すようになっている。プラトンの左4人目はソクラテス(論理学・修辞学)である。下段左にはピタゴラスが居て、算術・音楽・文法のグループである。下段右はユークリッドやプトレマイオスの幾何学・天文学のグループ。
Scuoladatene



ゴヤの「1850年5月3日、プリンシオ・ピオの丘での絞殺」は昨年、プラド美術館で実際に見たが、その日の出来事があたかも見てきたような迫真力で我々に迫る。この絵の中心となっている白いシャツの農民は両手を大きく広げていて、かつ右手には穴が開いている。キリストの磔をイメージしているのだ、と言う。
Francisco_de_goya_y_lucientes_023_1 スペインの歴史におけるこの日の位置づけについてはウィキペディアの「半島戦争」の項を参照されたい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E5%B3%B6%E6%88%A6%E4%BA%89

『寓意=アレゴリー』とは、難しい言葉である。 ギリシャ語のallegoria〈話すこと〉から来ており、抽象的概念や思想を、人物を中心としたイメージの組み合わせで表現する手法のことである。なお、ひとつの概念を一人の人物像で表わしたものは「擬人像」と呼ぶが、寓意に含める。
アレゴリーの歴史は古く、古代に発し、ルネサンスから17世紀にかけて集大成された。西洋美術における重要な約束事になっているが、暗号のように複雑化し、専門家でもてこずることもあるらしい。そのため、17世紀には寓意図像集というハンドブックまで作られたという。
いろいろな実例について紹介があったが、ボッティチェリの「誹謗」が、典型的で、かつ、とても面白いと思った。ウフィツィ美術館へは行ったのだがこの絵はあまり覚えが無い。多分、同じボッティチェリの「プリマヴェーラ(春)」ばかり見ていたのだろう。
この「誹謗」を何の予備知識も無しに見れば全く理解できないであろう。
古代ギリシャにアペレスという画家が居て、嫉妬からいわれなき中傷をうけ、身の潔白を訴え真実を明らかにするために「誹謗」という絵を描いた伝えられる。その絵は失われているが、その絵を実際に見た同時代のルキアノスが絵画記述を行なっているのである。
ボッティチェリはその記述を丁寧に再絵画化したのである。
それでは、ルキアノスはどう記述しているか?

☆―そこには、とても長い耳を持った1人の男がおり、その傍らに二人の女性《無知》と《猜疑》が立っている。別の側から《誹謗》が進んでくる。美しい女性の外見をしているが、その顔は狡猾さに慣れていることを表し、左手に松明を握り、もう一方の手で、両手を天に伸ばす若者の髪を引きずっている。彼女を導くのはひどく青白くて醜い、残忍な様子をした1人の男で、まさに戦闘での苦労のために憔悴しきった者にでもたとえられよう。それは《怨恨》の化身と思われる。さらに2人の女性が《誹謗》に付き添い、女主人の装いを整えている。《裏切り》と《欺瞞》である。彼女たちの後から来るのは暗い色の喪服を着た《後悔》で、自らの手で服を引き裂いている。それに続くのは、恥かし気で控えめな《真実》である。―☆
Photo_185




なお、補足すると、髪を引きずられる若者は《潔白》、長い耳の玉座の人は王ないし裁判官を表すとされている。
また、それぞれの概念の擬人化の仕方には約束があるわけで、例えば《真実》は、常に裸の若い女性なのである。

なるほど、《誹謗》などというややこしい抽象的概念も、擬人化すれば絵画表現できるのだ。アレゴリー=寓意画という手法が存在する意義がよく分かった。
同じボッティチェリの「プリマヴェーラ(春)」も寓意画であり、講座では詳しい説明があったが、長くなるので割愛します。
(アレゴリーの記述は、「まなざしのレッスン(三浦篤/東京大学出版会」を参考にしました。)

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