イラン旅行の印象その14 イスファハン(1)
イスファハン(ペルシャ語の発音はエスファハーン)はやはり素晴らしい街だった。
ガイドブックによれば、見所が多いから最低4日は滞在したいものだ、と書かれていた。我々は2泊したものの、実質的には市域に居たのは1日半ぐらいだったから、限られたところを駆け足で回ることになる。それで得たこの街の印象は何処まで確かであろうか?
《ザーヤンデ川~ハージュ橋~川べりの賑わい》
イスファハンに入ったのは金曜日の夕方だった。先ず目に付くのは市の南側を西から東に流れる、水の豊かなザーヤンデ川(生命の川)。この川は街の南側に連なるザクロス山脈からの雪解け水を運び、イスファハンを貫通して、砂漠を100kmほど進み、消滅してしまう。このザーヤンデ川の水でイスファハン周辺の農地は灌漑され、古くから人々に豊かな実りをもたらしてきた。
この川に架かる橋が、またとても優美である。橋の周辺は公園として整備されていて、市民の憩いの場となっている。たまたま金曜日(イスラム世界の休日)の夕方だったから、人出も多く、芝生や川縁には家族や仲間と思い思いに団欒する姿が見られた。女性の黒いチャドル姿が独特の雰囲気を醸し、木々の深い緑、満々と湛えられた川水、雪を被った不可思議な形の山...絵画の世界に入り込んだかと錯覚を覚える。
団欒の人たちに近づくと、一緒に入らないかとよく声をかけられる。ある賑やかなグループに写真を撮ってもいいですか?と聞くと、逆にこっちへ来いと言う。どうも「水タバコを一服やっていけ」とのことらしい。「ノー・サンキュー」というと、つまみをくれました。
イランでは、水タバコが団欒の重要な道具らしい。このように人が集まると、真ん中に必ず水タバコのセット(水パイプと言うのが正しい)が置いてある。どこのチャイハネ(喫茶店)にも必ず置いてある。
水パイプは中近東やインドで古くから普及しており、最も洗練されたパイプであると言われる。一度水中をくぐらせることによって冷却され,清浄化された煙が吸えるよう考案された。私も何回かチャイハネで吸ってみたが、味や匂いがとても軽やかで、頭への刺激も全く無かった。
酒が無いイランでは重要なコミュニケーション・ツールなのだろうと推察する。

豊かな水を湛えるザーヤンデ川、背景の濃い緑、不思議な形の雪山、黒いチャドルの女性たち...絵のような風景!中央はハージュ橋。右はスイ・オ・セ(33アーチ)橋。左の写真の橋の名は分からない。チュービー橋(橋上にチャイハネあり)かも?

休日を謳歌する市民たち。 
「一口吸いね~(水タバコ)」。
写真を撮らせてもらって、おまけにおつまみをもらってしまった。
《金曜日のモスク in Esfahan》
イスラム教の礼拝を行なう場所として、最初は各都市に1箇所モスクが造られたが、街が大きくなるにつれモスクの数は増えて行った。しかし、毎週金曜日正午の集団礼拝は必ず街の中心のモスクで行なわれることになっており、このため、マスジェデ・ジャーメ(金曜日のモスク)と呼ばれるようになった。そういうわけで、このツアー記録でも何度も出てくるのだが、ここは割愛するわけにはいかない。
エスファハンの金曜日モスクは、9世紀に創建されて後、火災で消失し、現在残っている建物の大部分は12世紀のものだという。しかしその後も増改築、修復が重ねられてきたことから、様々な時代の様式が見られるのが特徴である。現地ガイドの詳しい説明があったが、ここで再現するのは難しい。
しかし、とりわけこのモスクの特徴であり、かつモスク建築史上重要な事実がある。
イスラム教モスクのアーチを飾るムカルナス(鍾乳石飾り)が12世紀に大きな構造上の発展を遂げたが、その事例がここで見られるのだ。それまでは天井を支える部分にしか造れなかったムカルナスが天井全体に張り巡らすことが出来るようになった。
さらに、イスラム建築における三大発明の一つ「アーチ・ネット」と言う技法がペルシャで初めて取り入れられていることだ。アーチ・ネットというのは、アーチを交差させて天井を造る構造的工夫で、花壇に半円状の白いループを交差させながら造った簡易な柵のようなイメージである。
このムカルナスとアーチネットの二つの技術がこのモスクの天井に同時に実現されているのだ。
実は、このことは「世界のイスラーム建築(講談社現代新書)」で知った。暗くて大ボケ写真になったが、この本に出ているものと全く同じドーム天井を撮ってあったのです。撮ったということは、現地ガイドが説明したからだと思うのだが。
もう一点、漆喰作りの繊細なレリーフを施されたメフラーブ(メッカの方向を示す壁龕・・・前回の記事で説明)が存在することだ。これは本当に凄い。コーランの文句や唐草模様がびっしりと刻まれており、極上の美術品である。
1985年にサダム・フセインによって破壊されたところもあった。このモスクにはイランの長い歴史がそのまま刻まれている。

イスファハンの「金曜日のモスク」外観
76m×65mの広い中庭に建つと、四方に立派なエイヴァーンがある。金曜日の礼拝時にはこの広場に赤い絨毯が敷き詰められ、人々で埋め尽くされると言う。

最も古い12世紀の建物。天井は全部で470もあるという小さなドームの連続。
左の写真にアーチネットが見られる。
中の写真は天井のムカルナス(発展途上だからまだシンプルな形態である)に留意。
漆喰造りのメフラーブ(メッカの方向を示すモスクの最も重要な施設)
その緻密な細工には驚かされる。
これは新しい建物。お祈り中の人も見られた。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)





































































































































































