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2007年7月21日 (土)

静物画=“nature morte(死んだ自然)”

ACC講座「西洋絵画の図像学」の第3回では、静物画が取り上げられた。例によって木俣先生が選んだたくさんの絵をスライドで見せてもらった。
静物画とは何か、その成立過程はどうか、といった大きな流れはもちろんのこと、先生の講義の特徴は、一枚一枚の絵のディテールと共に、さらりとした口調の中に、先生自身のその絵に対する思い入れが熱く語られることです。
美術について無知な私にとって、基本教育の意義があることは当然ですが、いつもそんな素晴らしい絵が、おもしろい絵があるのか、と驚き、実物をそのうち是非みたいものだと思うのです。

まず西洋の静物画の成立過程を見ると、日本の花鳥画とは本質的に違うということがある。そのことは、英語で“still life(静かな自然)”、フランス語で“nature morte(死んだ自然)”という言葉が端的に表している。つまり、日本では鳥や花を、自然の姿のまま生き生きと描くのに対し、西洋では自ら動かない生命のないものを描くのが静物画であった。
彼我の差はどこから来ているのか?

旧約聖書の「伝道の書(1.2)」に
『コヘレトは言う。何という空しさ、何という空しさ(vanitas vanitatum)、すべては空しい。』というのがある。
17世紀頃、現世のはかなさ を含意する手段として、朽ちやすい生命を描くことが多く行われた。静物画の「ヴァニタス」というカテゴリーがこれである。

その初期のものとしてカラヴァッジョの「果物籠(1596)」の紹介があった。
一見すると、生気あふれる見事な写実表現、と思われるが、詳細に見ればリンゴは傷みかけているし、虫に食われたり枯れかけた葉も描かれている。
Photo_213
カラヴァッジョの「果物籠(1596)」
これはアンブロジアーナ絵画館にある。


典型的なのはデ・ヘームの「果物飾りのあるヴァニタス(1653)」。この絵には果物と共に、髑髏と小さなキリストの磔刑像が一緒に描かれている。面白いことに髑髏にハエがとまっている。
(残念ながら、この絵を見つけることができなかった。入手できたら追加します)

ヘーダの「木苺パイのある軽食のテーブル」は、食物や食卓を描くカテゴリー(最後の晩餐もそうだが)にも入るでしょうが、食べ散らかされたパイ、倒れた盃、割れたグラス、おまけに懐中時計(はかなさの象徴とされる)まで描かれていて、「ヴァニタス」を寓意したのではないかとみられている。
ところで、この絵のワインがつがれたグラスの質感の表現がとても素晴らしいと、先生から指摘があった。ある本にはこの絵について、「全体に色数は抑制気味で、質感表現、金属やガラスの反映像や液体の透明感の表現は迫真的である。と同時に、全体の構成に見られる堅固さと隙のなさは、重々しさ、厳粛さすら感じさせる」と書いている。
Photo_214
ヘーダの「木苺パイのある軽食のテーブル(1631)」
これはドレスデンの国立絵画館にある。

16~17世紀にかけてのオランダでは、上に述べたような、静物の姿を借りた宗教的教訓画であるヴァニタス(Vanitas)だけでなく、図鑑の伝統を引く花の絵,台所や食事の場面から発展した食卓画,動物画との関連の深い狩の獲物の絵など、さまざまの種類が興隆して,多くの専門画家たちが緻密な写実の技巧を競った。

時代が下って、18世紀フランスのシャルダンの紹介もあった。
彼は、より普遍的な近代的静物画への道を開いたとされるが、オランダ風の写実性にフランス風の色彩を調和させた素晴らしい静物画をたくさん遺している。
先生の気に入っているのは「銀のゴブレット(1761頃)」だ。これも描かれているゴブレットや陶器の質感表現が迫真である。かなり荒いタッチでありながらここまで表現できることが凄い、との先生の指摘だった。
Photo_215
シャルダンの「銀のゴブレット(1761頃)」
この絵はルーヴル美術館にある。


今回の講義で、こういった質感表現のすばらしい絵が幾つもあることを知り、美術に対する興味がさらに増したのでした。そして、スライドや美術書ではその素晴らしさが、十分には伝わってこないから、是非、実物を見て確かめてやろうと心に決めました。

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