カテゴリー「文化・芸術」の記事

2016年6月16日 (木)

モネのグラジオラス、スーティンのグラジオラス、ルドンの心に浮かぶ蝶...デトロイト美術館展より

デトロイト美術館展(豊田市美術館)を見に行った。

モネの〝グラジオラス〟が見られる!その一心で、炎天下、新豊田駅から20分歩く。
汗だくになったが、期待どおり、美しい絵を見ることができた。
モネの人生で最良の時期に過ごしたアルジャントゥイユの家の庭。
妻カミーユを中景に手前に大きく燃えたぎるようにグラジオラスが描かれている。
うかつなことに、原画を見るまで気が付かなかったことが。画面いっぱいに、蝶がとんでいるのだった。ここでは蝶はグラジオラスと共に幸せのシンボルなんだろうな、と考える。
PhotoPhoto_2





この展覧会には、同じ〝グラジオラス〟というタイトルの別の作品が出ていました。シャイム・スーティンの作品。乱暴に見えるくらいの激しいタッチで描かれているのが特徴。花も大づかみにシンプルに捉えられていて、そのため明るい赤の色が一層、暗い背景から浮き上がる。
生命力、血、情熱を表す赤!パッション溢れる絵ですね。
Photo_3








それからもう一点、印象に強く残った絵。
ルドンの〝心に浮かぶ蝶〟。赤味を帯びたオレンジの色ムラのある背景の中に、たくさんの蝶が描かれている。
これらは現実の蝶ではなく、心の中の蝶。
ギリシャ語で蝶は精神を表し、キリスト教的に言えば、蝶は毛虫、さなぎ、蝶と、変転...生命、死、復活を象徴すると言える。蝶は魂を表象しているのです。
Photo_4







(以上のコメントには、展覧会公式図録の解説から一部引用しています)

ほんの一部、しかも偏った取り上げで恐縮です。
本展覧会は名作ぞろいです。
会期は来週末(6月26日)と、迫っています。
また、珍しいことに、撮影可です。
Photo_5
展覧会パンフ
姉妹都市提携55周年記念
豊田市美術館20周年リニューアル記念

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2016年1月 4日 (月)

海洋堂フィギュアワールド(50周年記念展)は誰もが楽しめる

海洋堂フィギュアワールドを見てきた。
50周年記念だから、同社のエポックメイキングな作品が年代に沿って並んでいた。
フィギュアの製作者、原型師は同社には多数いると思うが、やはり最も有名で、海洋堂の土台骨をささえているのは〝BOME〟でしょう。
今回の展示の中でもBOME作品が多く展示され、ひときわ目立っていた。BOMEが作るのは言わずと知れた美少女フィギュアである。BOMEは1980年代から美少女フィギュアを製作してきたが、1995年に美術家村上隆から注文を受け、スポットライトを浴びる。これが認められ、1998年にはニュヨークで個展を開くまでになった。フィギュアがアートになった瞬間だった。
本展の目玉展示もBOMEの新作だった。ただし、写真撮影禁止!
エヴァンゲリオン新劇場版〝式波アスカ・ラングレーテストタイプ プラグスーツ〟
というもので、55cmの大サイズ。昨年9月に売り出され、86万円。当然 sell  out。
この作品のウリは、原型師自ら作った(塗装まですべて)ものを限定数だけ売るもの。
(通常はレプリカで量産する)

原型師としては松村しのぶも大々的に紹介されていた。
松村は1990年頃、アメリカ自然史博物館が海洋堂に発注した恐竜模型「アロサウルスVSバロサウルス」の製作を担当し、世界的な注目を集めた。彼は恐竜以外の動物などいわゆるネイチャーものを多数手がけている。
なお、エヴァンゲリオン初号機と言ったキャラクター ものも手がけている。

そのほかでは、情景師アラーキーこと、荒木さとしのジオラマの展示が異彩を放っていました。海洋堂で造られた戦車などに超絶リアルな背景と言うかシーンを添えるもので、とても見ごたえがありました。

最後に一言。男一人でこの展覧会に行くのは考え物。BOMEの美少女フィギュアはしっかりと見たいが、彼女たちと対面すると「面はゆい」気持ちが湧いてきて、長く留まれません。それが心残りです。

Photo〝海洋堂フィギュアワールド〟パンフ







《オープニング展示》
S北斗の拳等身大フィギュア



《レトロ~古き良き~今》
50年記念ということもあって古いものから順に並んでいる。
Photo_4Photo_3開業当時の様子
アートプラシリーズの帆船
社長の頭には当初からアート志向があったようだ。





Riekobands
古くもあり新しくもある



S_2S_3恋愛シュミレーション・ゲーム「ときめきメモリアル」(1994/5発売)のフィギュア






Photo_5懐かしの20世紀(タイムスリップグリコ)



S_4ウルトラマン勢揃い




S_12レッドミラージュ
ガレージ・キット







S_5デビルメイクライ Devil May Cry
ダンテ







S_6〝神曲奏界ポリフォニカ〟
コーディカルテ・アパ・グランジェス






Photo_6KO世紀ビースト三獣士
メイマー







S_5守護月天シャリオン




新世紀エヴァンゲリオン関連
時代設定が面白い。SFのはずが、もう過去の年代に。
西暦2000年の大災害により地球の半分が失われた。その15年後、謎の敵「使徒」との戦いが始まる...
Photo_7(物語の、あるシーンをジオラマで再現)
攻撃
1射目をかわされ、使徒の攻撃を受ける零号機と初号機
シンジ「綾波!!」
リツコ「盾がもたない!」
S_7




Photo_8高圧送電線ハードル
立ち並ぶ送電線を華麗に飛び越えていくエヴァ2号機
それはまるでハードル走のよう


Photo_9シンジ奪還
ヴンダーで保護されているシンジを奪いに来たアヤナミレイのエヴァMark.99
レイ「碇くん、こっちへ」
ミサト「だめよシンジ君 ここにいなさい」
シンジ「何だよ、ミサトさん さっきまでいらないって言ってたじゃないか」
S_8抱擁
使徒に取り込まれたレイを引き上げ、抱きしめるシンジ
シンジ「綾波、父さんのこと、ありがとう」
レイ「ごめんなさい。何もできなかった」

(上記セリフは展示に添えられているもの)
PhotoPhoto_2式波アスカラングレー
EVA2号機(右)のパイロット






Bome海洋堂×BOME新プロジェクト第一弾作品。
これは唯一の撮影禁止!(パンフのコピーです)
式波アスカ・ラングレーテストタイプ プラグスーツ
55cmの大サイズ

Sミサトとペンペン




ああっ女神さまっ
S_3Photo_3ウルド、べルダンディ&スクルド
北欧神話を意識したつくり




涼宮ハルヒシリーズ
Photo_4S_4ビミョーに非日常系学園ストーリー








《その他の美少女フィギュア 》
Photo_14Photo_12BOMEシリーズ 50cm級多数
左はエクレールⅣ







Photo_5




Photo_6






《船》
Photo_7ノーチラス


S_7海底軍艦



《戦車…情景ジオラマ》
S_8S_9このシリーズは必見
情景師アラーキー(荒木さとし)によるジオラマ作品



S_10Photo_8




《ゴジラ、モスラ》
Photo_9




S_11Photo_10力強いゴジラ、可愛いモスラ





《日本の天然記念物》
Photo_11Photo_13松村しのぶによる

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2015年10月22日 (木)

ヴェネツィア展でカメラ・オブスキュラによる写真作品を見る...〝内〟と〝外〟の並置が魅惑的な世界をつくる

名古屋ボストン美術館で開催中の〝ヴェネツィア展〟に、カメラ・オブスキュラによる写真作品が出ていた。それも二つの作品。
   1.アベラルド・モレル〝サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂〟
   2.ヴェーラ・ルッター〝ヴェニス・ポートフォリオⅡ(6枚組)〟
珍しいことだと思う。
カメラ・オブスキュラ...この歴史的な装置について、観覧者にどの程度認知されているのだろうか?

カメラ・オブスキュラは「暗い部屋」の意味で、カメラの原型、ご先祖様ですね。 Wikipediaに載っている原理図を引用しておきます。
Camera_obscura2Camaraoscura




部屋ひとつぐらいの大きな箱(部屋自体でも良い)の、ひとつの側面に穴をあければ、外界の風景が部屋中に見事に投射される。 ピンホール・カメラと同じ原理ですが、大きいのがポイント。
この原理は遠く、アリストテレスの時代から知られていたが、15世紀ごろ、芸術家が絵を描くための装置として利用し始めたのでした。ダ・ヴィンチが写生に利用したのをはじめ、下っては、あのフェルメールも活用したと推察されている。

現代でも作品作りにカメラ・オブスキュラを使っている芸術家はいるのだろうか?と言う疑問を予ねてから持っていたが、今回の展示はそれに応えるものでした。
モレル(1)の作品は2006年、  ルッター(2)は2005-6年、 まさに現代の作品だ。

PhotoPhoto
ヴェネツィア展公式図録の表紙と裏表紙
なんと、裏表紙がモレルの作品だった!
(なお、表紙はモネ)




Photo_2被写体となったサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂
もっとも写真が撮られるもののひとつとされる。
カメラ・オブスキュラとなった部屋は対岸にあることは確か。






Veniceヴェーラ・ルッター〝ヴェニス・ポートフォリオⅡ〟
運河風景をモノクロかつネガで...白黒反転の効果が印象的


どのように写真づくりをしたか?これも大いに興味のあるところ。
(1)モレルは、部屋全体を使い、先ず窓を覆って、そこにレンズを付ける。そうすれば外界の風景が部屋中に投影される。その映像を別のカメラで長時間露光で撮影する、と言う方法だった。 ここで、写真をやる人にとって常識だが、長時間露光の場合、人など動きのあるものは消滅してしまうのである。だからここには動きのあるものは写っていない。

(2)ルッターも、部屋を丸ごと使ってカメラ・オブスキュラを作り、その空間の中に大判の印画紙を置く。そこに投影された映像がそのまま写真作品(ネガ画像)になる。この場合も長時間露光により動きあるものは自動的に消去される。

部屋全体を使ったカメラ・オブスキュラで難しいのは、狙いとする風景(ランドマーク)が捉えられる部屋を如何に確保するかである。

このようにして得られたものは?
展覧会公式図録によれば...モレルの作品では、〝内〟と〝外〟が並置され目まいするほど魅惑的な映像となっている...

一方、ルッターの作品では、操作を最小限に抑えた直接記録ということでネガ画像のままである。極端にコントラストが強く、真っ白なフォルムが真っ黒な背景と対比され、此処に捉えられた大運河には不安な、悪夢めいた、そして潜在的に恐ろしい何かがある...と、図録は解説する。
            ☆           ☆
意外にも、かつては観光用カメラ・オブスキュラなるものが各地にあったようだ。直接外の世界を見るよりは、鮮やかに、そして生き生きと動いて見えて人気があったという。今でもイギリス等に残っているとのこと。
さらにさらに...日本のディズニー・シーにもある!(フォートレス・エクスプロレーションという施設内)
これは、潜水艦の潜望鏡のように天井部分からピンホール光を取り入れ反射鏡で90度曲げて室内のテーブル上のスクリーンに外界を映すもの。
そのうちにぜひ見に行きたいものだ。

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2015年9月 2日 (水)

オスカー・ニーマイヤーの作品とは?...曲線が美しすぎる建築の数々

大建築家オスカー・ニーマイヤーの日本初の回顧展が開催されている。場所は東京都現代美術館。
日経に「官能的な空間を追体験」というこの催しの紹介記事を見つけて面白そうだと見当をつけて行って見た。
この記事に載っている写真がすごい。ニーマイヤーの傑作の一つ、ニテロイ現代美術館は、その外見から、市民は「空飛ぶ円盤」と呼んでいるという。(実際、会場の初っ端で、大きな円盤が煙と炎と共に崖の上に降り立ち、美術館の建物になる映像をやっていて度肝を抜かれる)

実は、ニーマイヤーについて知識はまるで無かった。事前に調べて行けばよかった。後悔先に立たず...
会場で見たものは、数十分の一の素朴な模型の数々。最たるものはブラジリア大聖堂の骨組みの木製模型。16本のゆるやかな曲線を描く柱がやぐらを組んでいる。それだけ。
これは何なのか?全く想像力が働かず、興味を失いかけた。その時、壁に1枚の写真があるのに気がつく。実際の大聖堂の天井を写した写真。16本の支柱と、そして全面を覆うステンドグラス。天使?が宙に浮いている。もし、そこに実際に立ったなら!?行って見たい。そんな気になったのでした。

ニテロイ現代美術館の模型もあった。これも模型だけでは感激はわかないだろう。でも、壁の1枚の写真と頭の中で一体化すれば...

帰ってから、ニーマイヤーの建築作品の写真をネットで丹念に見た。
何とも驚くべきものばかり...
事前にイメージが出来上がっていれば、展覧会の模型がもっと興味深く見られたのではなかったか?

〝美しすぎる曲線〟が一つのキーワードになるでしょう。
展覧会パンフには、
『ニーマイヤーのデザインは女性の身体に例えられるように有機的で自由な曲線を特徴とし、ブラジルの自然が持つ生命感とモダニズムの幾何学を見事に融合させている...』
(したがってこの曲線は手書きで作られる!...)

今回、出ている模型(日本で特別に作成されたもの)は、
1 ブラジリア・メトロポリタン大聖堂
2ニテロイ現代美術館
3ハンプーリャ・コンプレックス
4国際連合本部ビル
5カノアス邸宅
6イビラプエラ公園
など...
あるサイトに、
〝ブラジルの巨匠オスカー・ニーマイヤーの曲線が美しすぎる名建築6選〟
というのがあるが、これに上記1,2、4が含まれている。
なかでも、「ブラジリア大聖堂」と「ニテロイ現代美術館」が飛びぬけて美しく、ニーマイヤーの代表作となっている。

今回の模型展示でもっとも大きなスペースを占有していたのは、イビラプエラ公園の1/30模型。この中を歩くことができ、あちらこちらにあるそれぞれ特徴ある建物を(這いつくばって)覗くことができる。ガリバーになった感覚で面白かった。

Photo〝オスカー・ニーマイヤー展〟のパンフ
上;ニテロイ現代美術館
下;カノアスの邸宅





《ブラジリア大聖堂》
Photo_2
今回展示模型



Photo_3Photo_4会場に貼られていた写真




0154(ネットより)
この絵が最もイメージが湧く
ステンドグラスの美しさが想像できる


《ニテロイ現代美術館》
Photo_5今回展示模型



Photo_6Photo_7会場に貼られていた写真




Photo_8美術館公式サイトより
実際の立地状況が分かる



《ハンプーリャ・コンプレックス》
Photo_9今回展示模型
ダンスホール(手前)とヨットクラブ(後ろ)
島や池を含めてすべてフリーハンドの曲線。

Photo_10サン・フランシスコ・デ・アシス教会
これもセットで、模型もあったが、写真欠落

《国際連合本部ビル》
Photo_11今回模型展示



Photo_13建築界の最大の巨匠ル・コルビュジエとの協同で造られた。



《カノアス邸宅》
Photo_12今回模型展示
実物は上記パンフ参照



Photo_14展示写真
ニーマイヤーの自宅。岩を動かさず地形に沿って建ててある。
柱が少ないのも特徴。


《イビラプエラ公園》
Photo
サンパウロ市制400周年記念公園
大相撲ブラジル場所がここで開催された
1/30の模型を展示




Photo_2Photo_4




Photo_5Photo_6公園の中の講堂(オーディトリアム)
実物はとても華やかなようだ



Photo_8Photo_7パビリオン(展示施設)模型を覗くと...

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2015年5月31日 (日)

JST 名古屋 ハワイフェスティバル 2015....たおやかな踊りと、美しい衣装と、そして美しき女性たち

〝JST 名古屋 ハワイフェスティバル 2015〟が、5月29日(金)から三日間の予定で開催されている。 二日目の30日(土)の模様の一部を写真で紹介する。

このイベントは、久屋大通TV塔からモチノキ広場までの間に、4つのステージ、ハワイアングッズやワークショップブースなどが設置され、見て、聞いて、買って、ハワイを体験する...というものだ。
メインのステージには、膨大な数のハワイアンダンスチームが登場する。 当地区がこんなにもハワイアンが盛んだったのかと、改めて認識した。
各チームが日頃、練習している踊りを公開する貴重な場となっているようだ。 波のうねりのような音楽と、たおやかな踊りと、美しい衣装と...そして美しき女性たち。 ゆったりと、心和む時間を過ごした。

Photo
〝JST 名古屋 ハワイフェスティバル 2015〟
パンフ






007008_3ラグビーでおなじみの〝ハカ〟
ニュージーランド・マオリ族の踊り
ハワイも含めてポリネシア(太平洋に散らばる島々の文化圏)に属し、踊りも同根であるという。
021ハワイアンにおける男性の踊り
フラは、もともとは男性が踊るもので、古来からの踊りは「カヒコ」と呼ばれ、厳粛なものだったようだ。

時は移り、現代の音楽を取り入れた踊りを「アウアナ」と言う...



11722075以下、たおやかな女性のおどり
美しい衣装や髪飾りとともに
お楽しみください






309012091







4241s5141










71196105_3活発でとても楽しい踊りだった




81269134




1115610160








12070バチを打ち鳴らして



1422413234sスナップ




31日(日)も同様の楽しい踊りが見れるでしょう。

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2015年5月 1日 (金)

アーサー・ウェズリー・ダウのサイアノタイプ(青の濃淡)写真...ジャポニズム、ピクトリアリズムとの深いつながりを 理解する

先日、名古屋ボストン美術館の「華麗なるジャポニズム展」に行った。

目玉はモネ「ラ・ジャポネーズ」やゴッホ「子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ ルーラン夫人」などの絵画作品であるのは言うまでもないが、写真作品もいくらか出ていた。
その中に、広重の藍摺りを思わせる青の濃淡のみの写真が3点出ていた。 アーサー・ウェズリー・ダウ(1857-1922)の作品で、キャプション(プレート)を見ると、使われた技法名が〝サイア ノタイプ〟となっている。
勉強不足と言われればそれまでだが、聞きなれない名称だったから、調べてみたくなった。 古い写真ではプラチナ・プリントとかゼラチン・シルバー・プリントはよく目にしていたのだが。

Wikipediaを見ると、〝サイアノタイプ=青写真〟 なんだ、青写真のことか、青写真という言葉なら私のような昔の理系人間なら、すぐ分かる。
サイアノタイプという言葉は何処から来たか?
イギリスのジョン・ハーシェルによって1842年に発明されたプロセスで、これにより自分の書いたものを簡単にコピ ーすることができるようになった。さっそく、1843年にはこれによる写真集も出来ている。実質的にこ れが世界で最初の写真集と言っても良い。
化学反応について深入りするのは止めるが、いわゆる銀塩写真の銀に対して、鉄を用いることだけ付記しておこう 。
サイアノの語源はギリシャ語でシアノス「濃紺」、あるいは「青色の痕跡」を意味し、ハーシェルが名付けた。

ところで、何故にこの展覧会にダウのサイアノタイプ写真が出ているのか?
冒頭でも触れたが、ダウが浮世絵の青摺りの魅力にに深く傾倒していたことは事実だが、 色彩の問題だけではないのだ。
当時の西洋絵画人にとって、浮世絵は驚くほど大胆で、意表を突く「構図」を持っていた。 そこで、多くの画家たちが取り入れ始めたわけだが(ジャポニズム)、 たまたま、この時期に、写真はその芸術性を確立するために絵画的写真を目指していました。すなわちピクトリアリ ズムですね。
そのなかで、写真はいち早く浮世絵的構図をどんどん吸収して行った... 前述のダウは写真と同時に版画も制作していて、浮世絵への関心が高く、収集も行っていた。
さらに彼が教育者( ボストン美術館所属)として多数の写真家や画家に対してし、日本的な構図について指導したとされる。

今回の展覧会図録には、「写真とジャポニズム―絵画主義(ピクトリアリズム)からの展開」という論説が載っていて、 上記のような当時の事情がよく理解できた。

Img061アーサー・ウェズリー・ダウ〝沼地風景〟
サイアノタイプ


Img060同〝沼のほとりの木立〟
サイアノタイプ


Img059同〝庭木戸〟
サイアノタイプ



PhotoPhoto_2「ボストン美術館 華麗なるジャポニズム」パンフ









《参考》この展覧会に出ているわけではないが、絵画主義(ピクトリアリズム)の代表的写真家アルヴィン・ラングドン・コバーンの作品を載せておきます。
コバーンはダウから、画面構成や「濃淡」の原理を学んだ、と上記図録論説に紹介されていて、この写真も参考に載っている。
Photo_3
アルヴィン・ラングドン・コバーン
〝ロンドン リージェント運河〟

まさに絵画的ですね。



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2014年10月22日 (水)

楽園も戦場も...ごった煮〝2014名古屋まつり〟のホンの一コマ

今年も地元のまつりはパスして〝名古屋まつり(2014/10/17~19)〟を見に行った。
年々巨大化して、どんなイベントが行われているのか全容はなかなか把握できないくらい。しかし、「郷土英傑行列」がこのまつりの核心であることは間違いない。毎年見ているのに、今年も見たい、いや「見なくてはならない」と義務感すら感じてしまう。

どのイベントもすごい人が集まるが、多分、「知る人ぞ知る」のイベントがある。久屋大通の北はずれで「ひそやかに」行われる〝ひまわりフェスタ〟のこと。
多くのイベントがTV塔から南、松坂屋やパルコのあたりで行われていて、桜通りを渡ってさらに北へ100mほど行かねばならない、そんな不便な場所で行われるのだ。
去年、初めて訪れてこれは素敵なイベントだと思い、今回徹底取材(?)したわけだ。
なんで、こんな場所でやっているのか?そのわけが分かった。
主催は「名古屋芸術の杜をみんなでつくる会」という、久屋大通最北部の森を市民に認知・利用してもらうための活動をしている団体なのだ。せっかく、森林風に作った素晴らしい場所なのに、遠すぎて人が来ないのですね。
内容は「ヒマワリの絵を中心とした野外美術展」と「野外コンサート」。国際交流も兼ねているようだ。
午後の明るいが柔らかい陽射しを受けた森の中にたくさんのヒマワリの絵が懸けられ、子供たちが踊り、ハンモックが揺れる...〝楽園〟という言葉が思い浮かぶ...

《ひまわりフェスタ》
1林間の美術展会場




23作品を見る人




45絵をくぐって遊ぶ




6028ハンモックで遊ぶ




7隣接のコンサート会場



89073出番待ちの子ら




9本格的バレエ




1011040ロシアの民族ダンスをこれから始める...




12049楽しく、可愛く




13060先生も踊る








14最後はみんなで





《郷土英傑行列》
これは説明不要でしょう。今回は栄交差点で撮ってみた。ここなら戦闘シーンが見られるから。
21豊臣秀吉
初めて女性が演じる







22黒田官兵衛




23にらみ合い




2425突撃!




2827交戦状況




29これは流し撮りなのですが...




3031出雲の阿国&...?








3233山車揃えや子供みこしも



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2014年10月15日 (水)

ジストニアに陥ったアコーディオン弾きの大道芸人...大須大道町人祭余話

先週末(2014/10/11~12)行われた名古屋の大須大道町人祭で久しぶりに〝アコる・デ・ノンノン〟を見た。女性ひとりのアコーディオンの弾き語りだ。
もちろん曲に合わせて踊ったり、若干の付帯的なパフォーマンスはあるが、地味な芸ではある。それなのにこの芸人は至極人気が高いのだ。それはひとえにキッチュな(=現代的で可愛い)容姿と上品な語り口によるもののようだ。
以前にちらっと見た時、とても魅惑的だったことを思い出し、今回は初めから終わりまで(約30分)つき合った。
私は音楽好きだから、どんな演奏をするのか興味があったのだが、正直言って、彼女の一挙手一投足に見とれてしまって、そっちは全くおろそかになってしまった。そして、彼女が語ったひとくさりに強い関心を持った。

彼女が言うには、
「昨年、大変な目にあった。突然、アコーディオンが弾けなくなったの」
「いろいろ調べた結果、音楽家がよくかかるジストニアだった」
「医者から何処の音大を出たか?とか、どんな難しい演奏をしているのか?と聞かれて困った。ズンドコ節と答えるしかないのよ」
「最終的には脳の手術を行うことになり、手術の際(?)頭の中で何か音楽を、と言われ、ズンドコ節を...」
といった具合に冗談を交えて話した。

たまたま、私はオリヴァー・サックスの〝音楽嗜好症〟(最近、新書版が出た)を読みかけだった。音楽に関係する数々の不思議な精神的症例を温かくかつユーモラスに取り上げたものですね。
この中でもジストニアについて1章を割いています。そのことを思い出しながら、彼女の話を興味深く聞いていました。
オリヴァー・サックスの本では、この病気が古くから実に多くの音楽家の身に降りかかったこと、そしてその苦闘、原因と治療法の探索が積み重ねられてきたことが詳しく述べられている。
ところで(少しわき道にそれるが)サックスの本〝音楽嗜好症〟のタイトルにもなっている「突発性音楽嗜好症」は、その第1章を占めている。
整形外科医をやっていた42歳の人がある日、雷に打たれた。一時的な心停止、錯乱、記憶の混濁の後、奇跡的に回復する。暫くたって音楽を渇望する自分を発見する。幼少の頃、ちょっとだけピアノを習ったことはあるが、音楽にはほとんど関心がなかった。それが突然、無性にピアノ曲を聴きたくて堪らなくなる。大変な苦労をしてピアノが弾けるようになる。そのうち、モーツアルトのように体内から音楽が自然に湧き出てくるようになる...
〝レナードの朝〟以来、オリヴァー・サックスの本を何冊か読んだが、今回もとても良かった。

話をアコーディオン嬢に戻すが、そんな深刻な経緯があったとはとても想像できない、明るくにぎやかなパフォーマンス(シャンソンが多かった)を終え、投げ銭を受ける段になった。真っ先に最前列に居た年配の男性が1万円札を高々と差し出した。その影響か、千円札が乱れ飛ぶ。
一段落した後、若い夫婦が彼女と並んで記念写真を撮ったりしていた...

PhotoPhoto_2〝アコる・デ・ノンノン〟の芸風








Photo_3




Photo_4頭を叩いてポカン、ポカンと音を出す








Photo_7Photo_6こんなパフォーマンスも









Photo_8オリヴァー・サックス〝音楽嗜好症〟














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2014年9月17日 (水)

マーク・タンジーやピーター・ドイグに関心を持つ...現代美術の森をさすらう

14日、〝現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展(名古屋市美術館)〟を見てきた。この自信に満ちたネーミング、でも展示作品を見た後には、「確かに!」と、うなづけたのでした。
なお、この日を選んだのは作品の解説会が行われるからだった。
Photo
展覧会のパンフ
人物像の作品はゲルハルト・リヒター





今回の展示作品には、写真とのつながりの深いものが多く興味深かった。
例えば目玉の一つゲルハルト・リヒターはフォト・ペインティングの手法でぼかしやブレをアート的に利用している。

多くの観客を惹きつけていたアンドレアス・グルスキーのV&Rは、華やかなファッションショーの模様を5m×2.5mという超巨大なプリントで再現したものだ。
デジタルでの高度な処理を行っている。背景の観衆の一律的なぼかし、モデルの整然とした配置...同じモデルの画像が何度か使われたりもしている。結果として、とにかく美しく、インパクトのある作品でした。

S_5アンドレアス・グルスキー〝V&R〟



話題性のある、面白い作品が多かった中で、私が個人的に興味を持ったものを挙げてみる。

《マーク・タンジーの「サント・ヴィクトワール山」》
先ず、公式図録のカバー裏面にも載せられている、マーク・タンジーの「サント・ヴィクトワール山」について。
セザンヌの絵でおなじみの特徴ある山と、麓の水辺で兵士たちが服を脱いで休息しているところが描かれているようだ。水面には山と人の姿が写りこんでいる。
しかしこの映り込みは単純な鏡像にはなっていない...ここまでは解説会で説明があったが、ネットで調べていると、この映り込みの人型は女性に変換されていると言うことが分かった。
かなり子細にこの絵を眺めたはずなのに気が付かなかった!
逆さの像というのは認識しにくいもの、というのは言い逃れに過ぎない。
なお、全体が暗赤色で覆わていて特別な雰囲気が漂う。ある解説では「黙示録的な世界」と表現していた。
S_3マーク・タンジー〝サント・ヴィクトワール山〟




S_4同じ絵を逆さにしてみると、水面に映っていたものがよく分かる



《ピーター・ドイグの「 カヌー・湖」》
もう一点取り上げるのは、ピーター・ドイグの「 カヌー・湖」。
解説員に寄れば今回の展示作品の中で〝最も色彩の美しいもの〟だと言う。
時間の関係で、解説を聞く前に全展示を見たのだが、先入観なしにもかかわらず、私もこの絵がとても美しいと思い、長い時間眺めていたものでした。
なんとなく不気味な感じが伝わってくるのだが、それもそのはず、「13日の金曜日」というホラー映画に触発されて制作されたものだ。
ピーター・ドイグについて、ネットで調べてみると、新しい具象(ニュー・フィギュラティブ・ペインティング)の画家とされているようだ。
現代美術は一時期、コンセプチャル・アートによって難解なものばかりになったが、そこから抜け出し、「絵画らしい絵画」を目指す動きも出、ピーター・ドイグはその延長線上の画家と位置づけられる。「新しい具象」とは、鑑賞者に〝何処かで見たことがある、行ったことがある〟と思わせるような、そんな方向だという説明があった。
ドイグの他の絵を眺めてみて、どれも確かに、私にも受け入れやすい絵だと思った。
そして、調べているうちに、「 カヌー・湖」の青緑の舟に対して、ほとんど同じ構図の赤い舟の絵(100 Years Ago)が存在することに気が付いた。

Sピーター・ドイグ〝カヌー・湖〟



S_2同〝100 Years Ago〟
これは展覧会と関係ありません


現代美術の森は深く、広い。何処に何があるのか、私には視界不良だが、見てみたいという好奇心だけは強い。

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2014年9月 2日 (火)

〝「4分33秒」論〟は音楽論なのかそれとも哲学の書か?

ジョン・ケージが1952年に作曲した〝4分33秒〟という曲がある。
どんな曲か?
Wikipediaのこの項の冒頭には、「この曲は音を鳴らすものという常識を覆す「無音」の音楽である」との説明がなされている。
ジョン・ケージの楽譜では、3楽章あって、それらがすべて「休止」の指示がなされているのだから、こんな説明になるのだ。
そして初演はピアノで行われ(何もせず)、4分33秒で終了。以後、この演奏(?)時間が曲の通称となる。
Wikipediaにはもう少し詳しく載っているのだが、此処だけ読むとケージのやろうとしたことの本質は分からないし、誤解を生むかもしれない。
私自身も、そこら辺で思考停止していた。

先ごろ、佐々木敦氏の〝「4分33秒」論〟が本屋に並んでいるのを見つけた時、250ページもの単行本にするほど内容があるのか疑念を抱いたものの、「音楽とは何か」と言うサブタイトルにひっかかりを感じ、買ってみました。
意外に面白くて一気に読めた。
超大雑把に印象に残った点を以下に(寝言みたいなものです)...

先ず、ジョン・ケージの無響室の体験というのがある。サイレンスを体験しようと無響室に入ったのだが、予想に反してそこでは高・低二つの音が聞こえたと言うのだ。エンジニアに聞くと自身の神経系統の働きや血液が循環する音だ、と言う。つまり、サイレンスなどと言うものは存在しない、ということを彼は悟ったのだった。その一年後に〝4分33秒〟が作曲された。

ケージのこの曲の意図は、4分33秒間何も演奏はされないけれど、聴衆は会場のざわめきや話し声、会場外からの雑音などを聞いてしまうだろう、つまり4分33秒の「枠」を設定すれば、必ずその中に「出来事」が生ずるということなのだ。初演においては、何も知らない聴衆の大半はこの「出来事」に気づかなかったかもしれないが、ある人々はケージの意図に気づいたと思われる。
ケージは後に、〝0分00秒〟という曲を作り、そこでは会場で発生する音をアンプで増幅している。「枠」の中に存在する「出来事」を人々に再認識させる試みだった。

こういったケージの取り組みの延長線上に何があるか?人々が枠の中の出来事に気づくならば、それが音楽、そして芸術につながっていくのではないか?と、著者は指摘する。
そして、著者の思索が深く、広く展開されていく。〝何も無い〟はずの処から思いがけない高みまで(すなわち音楽の原理にまで)登りつめて行くところが、とても痛快です。

ところで、興味深い事象として、録音版〝4分33秒〟が多数存在することがある。もし、録音されたものを聞くとすると、過去のある時点の4分33秒が再現されるのだが、同時に再生している今現在の4分33秒の中で生ずる音も重複して聞こえてしまうのだ。入れ子のような構造になってしまう...

また、ネットでも取り上げられ、いろんな騒ぎが起きていることも紹介されている。〝着メロ版4分33秒〟や〝カラオケ版4分33秒〟なんてものも存在するらしいですよ。

Photo
佐々木敦〝「4分33秒」論〟(2014/6 Pヴァイン)







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